2017年2月19日日曜日

「先生も休もう」日本の教師の過酷な長時間勤務

[京都新聞 社説 2016年07月24日] より

先生も休もう  夏休み、心身癒やす機会 


 公立小、中学校が夏休みに入った。8月末までの約1カ月、学校が休みになる。子どもたちは自由な時間を使って、思い切り学び、遊び、本も読んでほしい。

 同時に、学校の先生たちには日ごろの働き過ぎの自分を顧みてもらいたい。近年の国際的な調査で、日本の教員の長時間勤務は大きな問題になっているからだ。仕事に追われる先生はゆとりを忘れ、疲れ過ぎている。この際、ゆっくりと体と心を癒やしてほしい。

 先進国など三十数カ国・地域が加わる経済協力開発機構(OECD)の調査で、日本の中学校教員の忙しさが突出していることが明らかになった。「国際教員指導環境調査」と呼ばれる国際比較調査があり、2013年の第2回調査に日本が初めて参加した。

 先生の1週間の勤務時間は授業時間の17・7時間を含めて53・9時間だった。参加国平均の38・3時間を大きく上回り、最も長かった。他国と比べると、平均の1・4倍も働いている勘定になる。


 日本の場合、クラブ活動の指導や学校事務に使う時間が長い特徴がある。部活など課外活動の指導に7・7時間、書類づくりなど一般的事務作業に5・5時間をかけている。「教案」という授業の計画案づくりは放課後だけでは終わらず、帰宅後に自宅に持ち帰って行う先生も多いそうだ。

 調査を受け、文部科学省は今年6月に報告をまとめ、教員が担う事務の見直しや給食費を徴収する業務の自治体への移管、部活動休養日の徹底などを呼び掛けた。多忙過ぎる先生を何とかしようと、やっと重い腰を上げた。

 滋賀県教委は昨年6月に県内の全校長を集めて、自ら仕事と私生活を楽しむ「イクボス」となると宣言書に署名し、長時間労働を減らす試みを始めた。

 京都市内の公立中学では、勤務時間の短縮を図る取り組みが具体化している。今年4月からは毎週水曜日を「統一閉鎖時刻日」にした。教員に午後7時までの帰宅を促す方針を決め、同時に「ノー部活デー」として、生徒も早めに帰宅させている。

 京都府教委も府立学校に勤務時間の短縮を求める通達を出して、夏休み中に学校の業務休止日を連続7日間設けることやノー部活デーの導入を提案した。同様の内容は小、中学校を所管する府内の各市町村教委にも伝えたといい、先生の仕事を効率化する動きは広がっている。

 特に、中学と高校教員のうち運動部の顧問を務める先生の実態は深刻というべきだ。一部の学校では放課後の練習に加え、早朝の授業時間前に「朝練」という練習を行うクラブもあり、休日には対外試合もある。生徒を指導する顧問の先生の負担は大きい。

 子どもと一緒にいる学校という空間で、先生がオン(仕事)とオフ(休み)の時間を区切るのは難しい面はある。長い夏休みはチャンスかも知れない。休むときは思い切り休み、英気を養う。そんな先生たちの夏休みであってほしい。

[京都新聞 2016年07月24日掲載]
(転載はここまで)