東京新聞>【ドナルド・キーンの東京下町日記】より 転載
本読み平和への旅を
2016年8月14日
渡辺真理さん(左)と談笑するドナルド・キーンさん=東京都北区で(五十嵐文人撮影)最近、小学生や中学生から「キーン先生、握手してください」と声を掛けられることが増えてきた。もちろん、うれしいのだが、なぜ急に-とけげんに思っていた。考えてみると、どうも東日本大震災後に日本人になった私のことが、教科書に載ったことと関係があるようだ。学校からの講演依頼も増えている。
九十四歳の私は残された時間を考えて、研究活動を優先させている。そのため、講演依頼には、ほとんど応じられずにいる。そこで講演代わりに、というわけでもないが、夏休みに未来を担う子どもたちへ、少しだけアドバイスをさせていただきたいと思う。
まずは読書。優れた日本文学を読もう。お薦めは、やはり古典である。日本の古典教育では、原文の読解と文法が重視される。入学試験でも同様の傾向がある。だが、それは間違いだ。味気なく、面白くもない。文学は、まず読んで楽しむものだ。私は「源氏物語」の英訳を読んで、古典の素晴らしさを知った。もし、最初に原文を強いられていたら、私は日本文学に関心を持たなかっただろう。




