「本土の人は沖縄の問題にもっと関心をもつべきだ」と語る津田大介さん=東京都港区で
東京MXテレビの番組「ニュース女子」が一月二日に放送した内容について、沖縄の米軍基地に異議を唱える人びとへの憎悪を広めた「ヘイト放送」との批判が出ている。番組の奥にある本質は何か。識者に聞く。
◇
沖縄の米軍基地反対運動を扱った東京MXテレビの番組「ニュース女子」は、一から十まで事実に基づかない、ひどいものだった。同局がこの問題とどう向き合い、放送倫理・番組向上機構(BPO)がどう判断するのかはっきりしないと、コメンテーターを務めている同局の番組には出られないと考え、今後の出演を断った。
沖縄の全市町村の首長たちがオスプレイ配備撤回を求め、二〇一三年に東京でデモしたときに、「おまえら中国人の手先か」「死ね」などと、ひどい言葉を浴びせかけられた。今回はメディアが、間違いだらけで、偏見と憎悪に基づく番組を放送してしまった。双方の根底にあるのは沖縄への差別意識以外のなにものでもない。
私は翁長雄志(おながたけし)知事が当選した二〇一四年の沖縄県知事選から沖縄の問題を継続して取材している。それまで、沖縄の基地問題について詳しく知らなかったことを恥ずかしく思う。
本土のわれわれが基地問題から目をそらし続けてきた結果として、沖縄の現状がある。本土の人が基地問題と向き合わないのは、そうすれば、本土による基地の引き受け論につながってしまうからだ。
日米安保と日米地位協定という動かしがたい現実があり、一方で中国の脅威もある。現状は「沖縄が犠牲になってよ」と言っているのと同じ状態。でもそうは言いにくいから、基地に反対する人を「中国の手先だ」と批判することでごまかしている。
ネット上には都合のいい一瞬の事実だけを切り取って、全体を語るような情報があふれている。
例えば、高江のヘリパッド建設反対のために建設現場付近のテントに集まった人たちが、手をあげている写真が発信された。これは「県外から来た人、手をあげてください」という呼び掛けに応えた場面。これを見ると反対運動しているのは県外の人ばかりに見える。私はこのとき現場にいたのだが、テントの外にもっと多くの県民がいたのに、それを無視している。
今回、深刻なのは、同レベルのものが地上波で放送されてしまったことだ。ほかのメディアはこの問題に対して、もっと怒るべきだ。そうしないと、政府が放送に介入するきっかけをつくってしまう。
<つだ・だいすけ> 1973年生まれ。東京都出身。ジャーナリスト。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ネットメディアと幅広い分野で活躍。インターネットの政治メディア「ポリタス」の編集長を務める。